歴史好きで骨董品の収集が趣味のA氏は、ある発明家の
電話に興味津々でした。
「じゃあ、明日の午後三時に家の方に来て下さい。」
大きなジュラルミンケースを手に持ったある発明家は、
A氏との打ち合わせ通り、裏口からこっそり
家に入ってきました。
「家族に見つかるとまずいんでね。では、
地下の秘密の部屋へ行きましょう。」
広さ10畳ほどの秘密の部屋に着くと、ある発明家は、
ジュラルミンケースを開きながら「これが、3D+αテレビです。
立体的な画面だけでは物足りないというお客様のために
作られました。」
ある発明家の説明を聞き終えたA氏は、
夢見心地の顔になっていました。
「早くリモコンを貸してくれ。このパネルの上に立って、
リモコンの赤いINのボタンを押せば、
本当にテレビに映っている時代に行けるんだね。」
「はい、そうです。一度試してみますか。
あまりに楽しいので、時間を忘れてしまいます。
ご注意を。」
A氏は銀色のパネルの上に立ちINのボタンを押しました。
部屋中が真っ白な光に包まれて、A氏の姿は消えました。
1時間後、戻ってきたA氏は非常に興奮していました。
「素晴らしい!買った!いくらだ!」
「1000万円です。」
値段を聞いたA氏は、金庫の鍵をゆっくりと
ポケットから取り出しました。
ある発明家が帰った後、
A氏の姿を見た人は誰もいません。
きっと、A氏は、思う存分、
一人で時間旅行を楽しんでいるのでしょう。